Research
Research
研究関心と現在取り組んでいる課題
Research Question
同じサービスが提供されても、なぜ価値ある成果にたどり着ける人と、そうでない人がいるのか
サービスの利用者は、価値を受け取るだけの存在ではありません。情報を理解し、努力し、必要に応じて支援を求め、別の方法へ切り替えながら、自分の目標を実現しようとします。しかし、同じサービスでも、顧客に求められる作業と、顧客が持つ知識・能力・動機・時間・利用できる支援は同じではありません。その結果、自力で続ける人、支援を利用する人、別の方法へ切り替える人、延期する人、断念する人に分かれ、目標達成の可能性や負担にも差が生じます。
私の研究は、この差を個人の能力不足だけに還元せず、顧客側の準備性・リテラシーと、サービス側の参加要求・支援・選択肢・制度との組合せから捉えます。提供者が想定する利用経路の完了と、顧客自身の目標達成を区別し、人が自分にとって価値ある目標を実現できる実質的な機会を広げるサービスのあり方を明らかにすることを目指しています。
Research Areas
三つの領域を、「価値実現の機会」という問題意識でつなぐ
01
顧客参加と顧客共創準備性
顧客共創準備性(CCCR)は、顧客がサービス提供プロセスに参加するための準備状態を捉える概念です。現在、役割を理解・遂行する「遂行準備性」と、参加しようとする「動機づけ準備性」を中心に尺度の開発と検証を進めています。CCCRを顧客の固定的な優劣として扱うのではなく、サービス側の参加要求や支援環境との適合に注目します。
02
共創格差とサービス設計
同じサービスに直面しても、顧客は自力継続、支援利用、別の方法への切替え、延期、断念など異なる経路をたどります。参加要求とCCCRの組合せがこうした対応分岐を生み、目標達成の可能性・負担・達成度に顧客間の差を生む仕組みを「共創格差」として研究します。格差を個人の能力不足に還元せず、支援、選択肢、参加要求などのサービス設計によって縮小できる条件を検討します。
03
Transformative Service Literacy と価値実現の機会
Transformative Service Literacy(TSL)を、サービスを理解・評価・活用し、自らにとって価値ある目標へつなげるための基礎的能力に関わる概念として発展させています。顧客側の能力だけでなく、その能力を活かすことのできる情報、支援、選択肢、サービス環境との関係に注目します。TSLは博士論文で提案した概念です。
Theoretical Perspective
価値実現を、プロセスとシステムの両方から捉える
価値共創については、Service-Dominant Logic(S-D logic)のシステム視点を長期的な理論的対話の基盤の一つとしています。顧客、企業、技術、制度などの資源統合と相互依存が価値実現の機会をどのように形成するかに関心があります。
一方、個別のサービス場面で、提供者が顧客の生活や仕事のプロセスをどのように支えるかを検討する際には、GrönroosのService Logicが強調するhelping、value facilitation、customer processの視点を参照しています。両者では価値共創の定義が異なるため、それぞれの理論的文脈を区別して用います。
長期的には、consumer well-beingを最終的・規範的な関心に置き、Transformative Consumer Research(TCR)、Transformative Service Research(TSR)、SenやNussbaumのCapability Approachを重要な理論的手がかりとしています。個々の研究では、目標達成の可能性や負担、利用中の判断・対応など、研究課題に応じた成果やプロセスを検討します。
Capability Approachは、人が自分にとって価値ある目標を実現できる「実質的な機会」に注目するための視点として参照します。CCCRやTSLをcapabilityそのものと同一視せず、顧客側の準備性・リテラシーとサービス環境が、その機会をどのように広げたり制約したりするかを検討します。
Current Work
準備性から利用中の判断・対応と価値実現へ
顧客共創準備性(CCCR)の概念化と尺度開発
科研費の研究を基盤に、複数のサービス領域でCCCRの測定モデル、信頼性、測定不変性、外的基準との関係を検証しています。サービス領域を越えて再現する準備性の構造と、文脈によって変化する部分を明らかにします。
日本学術振興会 科学研究費助成事業(科研費)研究活動スタート支援、2025–2026年度(2027年3月まで)。課題番号:25K23154
利用中の判断・対応と共創格差
次の研究段階では、サービス参加要求とCCCRの組合せが、成果価値・努力コスト・努力の有効性に関する判断を通じて、自力継続、支援利用、別の方法への切替え、延期、断念にどうつながるかを検討します。提供者が想定する利用経路の完了ではなく、顧客自身の目標達成を最終的な成果としています。
共創格差を縮小するサービス設計
参加要求の低減や有効性を高める支援、利用可能な選択肢の設計によって、特に準備性の低い顧客の目標達成が改善し、顧客間の価値実現機会の差を縮小できるかを検討します。
Approach
研究課題に応じて、量的・計算的アプローチを組み合わせています
主な分析方法
- アンケート調査と尺度開発
- 因子分析・構造方程式モデリング
- オンライン行動実験・縦断調査
- ベイズ統計
- 部分識別・感度分析
- テキストマイニング・質的データ分析
主な研究文脈
- デジタル・セルフサービス
- 医療・専門サービス
- 金融・行政などの手続きサービス
- Eコマースとデジタル選択環境
- Transformative Service / Service Inclusion